レッドブルホンダの5連勝

昨日のオーストリアGPも、レッドブルの圧勝でしたね。と言うか、フェルスタッペンの圧勝。

すごいです。ついでに言えば、ノリスもすごいですね。

ホンダエンジン(PU)の5連勝は、セナ&プロストの88年以来ですね。33年振りですか。え、、、セナの時代で33年経ってるのかぁ・・・。

この頃の連勝と、今回の連勝は、全然意味合いが違うと感じます。私見ですけど。

85~88年は、近代F1の黎明期で、ホンダが燃料噴射のPGM-F1入れてきたり、電子制御がいよいよ本格化し始めたり、テレメトリーもホンダが導入したり、で、実際、ホンダほどの大企業の資金力も背景にあったのと、バブル時代の日本の高い技術力も背景にあり、ある意味、あの圧倒的な強さは必然だった気がします。

いや、実際、フェラーリが連勝止めた時は、やった!ぐらいに思ってましたから。まぁ、その驕りが第3期の体たらくに繋がるわけですが・・・。

この頃は、ホンダがあまりに強くて、そこをなんとかしようと、ブローオフバルブつけたり、燃料タンク容量規制等々、色々対策してましたね。それでも、89年からはNAになるのが決まってましたから、ターボエンジンに開発資金を投入するわけもなく、ルノー、BMWはすでに撤退、フェラーリ、アルファ等しかメーカーチームは無く、他は、古いBMWやハートの直4ターボをプライベートチューンしたのと、古いコスワースのNAV8ジャッドチューンとか。

これでは、セナ&プロスト擁する最新鋭のホンダパワーに勝てるわけがないのは当然のこと。それは、当初レースを観ていても感じられたことで、唯一フェラーリだけが頑張ってましたが、実質はセナかプロスト(ロータスホンダもいましたが・・・)か、で、昔からのF1マニアとしては、これはつまらん・・・と内心思ってました。

で、今回の第4期。復帰当初から、これは危ないなぁ、と思ってましたが、やっぱりか。。というマクラーレンとのコンビ解消。

F1は、常に日進月歩で、その速度は、量産車メーカーには想像もつかないほどですよね。そこに、復帰しまーす、的なノリでは、失敗は目に見えてました。例えばプレチェンバー燃焼技術では明らかに遅れてました・・・(CVCCやってた元祖的メーカーなのにね)。で、叩き落されてからの、今回の5連勝。

88年と違って、メルセデスという最強絶対王者(しかもブラックリーの。なんたる皮肉・・・)に対しての結果ですから、これはすごいと思うわけです。実際レッドブルのシャシー性能が上がったのもあるとは思いますし、マックスの桁違いのタレントもありますね。

ホンダPUも、もちろん性能も耐久性もパワーデリバリー制御も、とても上がってるのでしょう。ホンダが本気になった、と言われてますが、それも確かにあるのでしょう。エンジン屋としては、今ここでF1での強さを見せ、エンジン屋としての集大成を見せ、有終の美を飾りたい、という会社としての意志を感じます。

ファンの間では、当然これでやめるのはもったいない、となりますし、自分もそう感じますが、すでに自動車産業は、電動化を視野に動いてますから、これはもう、1企業がどうこうの問題では無くなってますね。

ホンダとしても、企業業績の9割近くが米中販売。日本はちなみに4輪事業は毎年赤字。で、中国は完全に電動化に向けて驀進中、米はまだそこまでではないにしても、テスラが株価でトヨタを抜くほどに急成長で、次の普及版のモデルは300万円台。ヨーロッパは、フォルクスワーゲンのディーゼル不正問題を挽回しようと、やはりEVに舵を切ってるし、各国政府もそれを推進。EVの充電ステーションも充実させようとしてます。インフラが一番大事ですからね。

その中で、F1のパワーユニットの持つ意味とは?と考えてしまうのは、経営陣としては当然だと思います。ひとつ問題だなぁ、というか、これが現実なんだなぁ、と思うのは、レッドブルホンダが勝ちました、ということに対して、ホンダのディーラーはとてもとても冷ややかなんです。

これは、実際の現場の声ですが、プロモーションも全く無く、本社(HM)からも積極的な支援もない。例えばPOPや、販促グッズも、高額で自腹。それでいて、車売れ売れ、という態度で、売れなければ売れ筋商品は卸せません、と。

私が若い頃、例えば85年~87年とか。CR-Xやインテグラに、F1スペシャルという特別仕様車がありまして、特にホンダが好きなわけでもなかった自分ですが、F1マニアとしては、これは欲しい、と思ったものです。

現在に至るまで、ホンダ車中心で乗り継いできてるのも、F1に参戦する資金を提供して応援しよう、という気持ちでした。そういうエモーショナルな気持ちにさせてくれる施策が、今のホンダからは感じられないのです。

開発のほうでは、かなりの努力をして頑張っているのは分かりますよね。現場スタッフや、SAKURA、ミルトンキーンズも。ホンダ広報も、ツイッター等で発信しているのは分かりますが、どうも、ホンダ全体で考えると、そこまで盛り上がってないのが現状。「それよりも、売れる車作ってよ・・・。そんなのにお金かけても、車売れないよ。なんなら、その資金は、おれらが車売って稼いだ分、ピンハネしてF1やってるんでしょ?なら、そんなのさっさとやめて、給料増やしてよ・・・」

ホンダのF1での活躍が、現場の売上やモチベーションに全く繋がってない現状で、しかも、マーケット(株式市場)は、電動化の遅れにはかなり厳しい目を向けていて、、、、

これでは、経営陣としては、悩みどころでしょう。いくらF1やりたくて入社した三部さんが社長になっても、ここを無視して、継続ずるぞ!とは言えないと思います。

日本の自動車産業は、日本の企業の根幹を成すもので、ここがこけたら、半分がこけると言っても言い過ぎではないわけで。その産業自体が、かなりの危機感を持って動いてるわけですよね。F1やるくらいなら、電動車の開発しろ!という外部からの圧力も相当あると思います。

今日の株価も、5連勝なぞ関係なく、下がってます。相場との兼ね合いもあるので、あまり関係ないのですが、逆に、勝っても株価は上がらない。たとえ、チャンピオン獲っても、関係ないでしょう。

株価が上がろうが下がろうが、自分たちやF1には関係ないだろう、となると思いますが、もし、量産車の電動化に失敗し、販売不振に陥れば、株価は下がり、中国資本に買収される可能性もないとは言いきれません。今、家電メーカーで起きてることが、将来の自動車メーカーの姿なのでは・・・と不安視されてるわけです。

中国では、劣悪ながら、EVカーがどんどん開発されてきてますよね。EVは、極端に言えば、電動RCカーと同じなわけで、RCやってた自分からすると、そりゃそうなるよね、という世界。

ブラシレスモーターによって、メンテが不要となり、構成部品もエンジン車に比べたら、圧倒的に少なくなり。結果、テスラなんか、iphonと同じ思想ですよね。ありものを組み合わせて、新しい価値観のモノを、安価に大量生産できる、と。それでいてハイプライスでも文句言わずに買ってくれるわけですよ。これいいじゃん、便利でおしゃれ、って。

もちろん、環境負荷の大きさは、逆にEVのほうが大きい、とか、エネルギー効率考えれば、ガソリンエンジンのほうがいい、という面もあると思います。再生エネルギーや原子力使わないと、成り立たない話だなと思います。ですが、実際問題、環境どうこう、効率どうこうは置いておいて、世界情勢がその方向に向かっている、という現実があると思うんですね。

そういう時代が、もう目の前に迫ってきている時に(日本では現実感は無いですが)、経営陣がF1継続しよう!って、なかなか・・・。いや、ほんとは、量産車は、まだまだハイブリッドのほうが優勢だとは思うんです。ですが、最近新しい技術で開発されてるバッテリー等、ここに技術的優位性を求めて、世界の企業が躍起になって投資してるわけです。ここでブレイクスルーが起きれば、一気にEV化が進むでしょう。

その時に慌てても、すでに遅いのは、スマホの開発で後手に回った日本企業を見ると、その行く末がはっきり見えてくると思います。

こうなると、今はとにかくそこにリソースを集中投資していく、という戦略も当然と言えば当然でしょう。ただ、ブランディングは、またそことは違う手法も考えなければいけないところで、F1というブランドは、とても魅力的なはずです。

ここで、悩むホンダにレッドブル(と山本さん&田辺さん)が考えたのが、今の技術供与&協力的なスタンスの提案、なのではないでしょうか。つい1~2年ほど前に、ホンダは、「F1パワーユニット開発人員募集」という広告を大々的に打ってました。これに応募した人もいたでしょう。そういう方は、F1やりたくて転職してきた人だと思います。ところが、そのすぐ後に、撤退表明。

これは、たまったもんじゃないし、人を馬鹿にしすぎ。大企業の常とは言え、ひどすぎだなぁ、と思いました。

レッドブルパワートレインズは、その解決策としては魅力的な提案で、ここに出向&転籍させればいいわけですよね。現地でやりたい人は、そういう形にしておいて、ただし、戻りたい時はホンダに戻ってもいいよ、という担保も必要ですが。

で、SAKURAで組み立てる、という話も出てきたわけで、これも、メンテナンスという形も取っておきながら、当然開発にも関わると思います。SAKURAをホンダ本体から離したのは大正解だったのではないでしょうか。技術研究所を解体した時は、いよいよ改革を余儀なくされてきてるなぁ、とは思いましたが、次世代技術に特化させていく、というスキームはいい方向に向かってるかな、とは思ってます。

結果、名ばかりの撤退、という話にもなってきますが、株式企業、ましてや世界的大企業になると、こういうエクスキューズも必要となるでしょう。株主への説明、政府からの要望、従業員&労組との折衝においても、ここは問題になるところですから。

もちろん、応援してる株主もいるし、従業員もいるでしょう。ですが、実利を伴わないと、人はなかなか納得しないものです。F1で勝てば株や給料が上がる、となれば、頑張れ!!となるのでしょうが・・・

今回の参戦終了の過程は、そういう意味ではうまい落としどころだったなぁ、と私は思ってます。あの第3期の惨めな撤退とは違い(リーマンがあったとは言え)、世界情勢を鑑みると、やむを得ないがポジティブな参戦終了、と納得できます。

PUに関わりながらも、資金はレッドブルが出してくれるわけですから。今までF1に流れてた資金は、EV開発にまわせるわけで、これでもし本当に今年タイトル獲れれば、そのブランドイメージは棄損せずに、今度はそれをEVに引き継いでいけるわけですから。

じゃあ、F1が好きで応援してきた俺らはどうなるのよ!となるわけですが、F1自体が転換期になってきてると自分は思ってます。次世代のPUがどういう形になるのかは、もう、量産車とは関係ないところに向かうしかない、と。

F1が走る実験室ではなくなる、と言ったら言い過ぎでしょうけど、もうレース界全体がそういうモードに入ってきてますよね。

極端な話、GP2を観てても、そこにはレースが存在するわけで、あれが、シャシーが全部違うコンストラクター製だと、結構盛り上がると思うんですよね。昔、F2時代、マーチ、シェブロン、ラルト、トールマン等々、かなり面白かった。エンジンも、BMW、ハート、ホンダとかね。

最先端技術こそがF1だ、という場合、今は資金力が莫大な金額になってきてますから、その最先端を追うのは、もう無理でしょう。2.4リッターV8なんか、ちょうど良かったんじゃないですかね。音も良かったし。さすがに古いですか?

今のPUのERS外しちゃう?逆?ターボ外しちゃう?難しいですねぇ、、、

ポルシェ・VWの参戦も視野に入れるなら、どういうイメージなんでしょうね。今のご時世、ハイブリッドは必須だとは思いますが、究極のコンベンショナルエンジンの戦いも見てみたいです。もちろん、量産車との関係はほぼなくなるわけですが、企業ブランドイメージは上がるでしょう。ヨーロッパはそこが大事ですよね。

F1がどう変わっていくのかは想像もつきませんが、結局人間がマシンを操ってレースをする、という大本は変わらないわけで、そこは時代とともに変貌していって全然かまわない、という気持ちです。それよりも、マネージメントのほうが心配。一貫性の無いルール作りや、エンターテイメント・マーケティング重視の危うさに、かなり不安は覚えます。

自分の本音を言えば、ホンダさんにはもっと頑張ってもらって、FIAに対して影響力あるくらいになってほしかったです。が、F1はヨーロッパのもの、というアイデンティティ(だからこそメルセデス、ルノー、フェラーリは撤退しない)があり、あえて距離を置いてる感もあり。

そこは、日本の現在の経済力・政治力の無さも一因してるかな。日本の圧倒的な経済力・技術力は、すでに過去のものであり、今ホンダがメルセデス相手に連勝してることの意味の大きさに、気づいてる人がどれほどいるか。

IT後進国と言われるほどになった日本だからこそ、WRCのトヨタ(WECはちょっと・・・)、モトGPのヤマハ・スズキ、INDY・F1のホンダ等々の活躍は、モータースポーツファンとしては、溜飲を下げる思いです。

ホンダブランドとしては、最後となる今年のF1。メルセデスもこのままじゃないでしょう。油断しないで、頑張って、有終の美を飾ってほしいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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